猫の感染性腹膜炎(FIP)に関する欧州のガイドライ(12) Feline Infectious Peritonitis: European Advisory Board on Cat Diseases Guidelines
組織およびFNA検体のFCoV RT-PCR検査
FIPが疑われる猫から組織生検検体を採取した場合、組織病理学的検査および免疫組織学的検査を行うことが推奨されていた。しかし、現在では、組織検体からFCoV RNAが検出されれば、FIPの診断を確実に下せるため、RT-PCR検査に提出する。
FIPではない猫でも、組織中のFCoV RNAがRT-PCRで陽性となる場合があり、FIPに罹患した57頭260組織と、FIPではない45頭258組織のFCoV RT-PCRを評価した大規模な研究では、FIPでは90%が、FIPではないサンプルでは8%がFCoV RT-PCR陽性であった。他の論文では、FIPではない87頭1861組織の24%(21/87)で糞便以外の少なくとも1つの組織または体液検体でFCoV RT-PCR陽性であり、全検体のうち4%(78/1861)がFCoV RT-PCR陽性であった。
ホルマリンはRNAを分解しPCR感度を低下させる可能性があるため、検体をホルマリン固定しないことが推奨されている。
ドライタイプの11頭のFIP症例すべてで、超音波ガイド下FNAからのFCoV RNAの増幅に成功したと報告されている。ドライタイプの症例18/20頭でFNAによるRT-PCR結果が、感度90%で陽性と報告されており、FIPにではない猫1/26頭で 特異度は96%でFCoVを検出した。
FIPの猫20頭を対象とした研究では、RT-PCR陽性率はFNA(65~85%)と切開生検(70~90%)で同程度であった。
組織サンプルのFCoV RT-PCR検査が陽性で、細胞診結果が一致すれば、FIPの可能性が非常に高いと診断でき、抗ウイルス治療による試験治療を開始する。
髄液検体のFCoV RT-PCR検査
髄液検体を用いたFCoV RT-PCR検査の感度は低く、FIPの猫では30% ~50% に過ぎない。しかし、FIPの神経学的および眼科的症状を示す猫のみを対象とした場合、RT-PCRの感度は86%に上昇した。神経性と非神経性FIPの両方を対象とした場合のRT-PCRの感度はわずか30%であったが、神経性FIPの猫のみを解析すると感度は83%に上昇した。
FIPではない猫15頭と29頭を対象とした2つの研究で、髄液サンプルのFCoV RT-PCR検査は特異度100%で偽陽性なしと報告されている。すなわち、髄液中のFCoV RT-PCRは、神経学的徴候を示す猫において有用な追加検査であると考えられるが、陽性反応はFIPの診断を強く支持するが、陰性反応はFIPを除外するものではないことに留意する。
房水検体のFCoV RT-PCR
剖検時に採取されたFIPの猫の房水検体でFCoV RT-PCR陽性反応が報告されているが、FCoV RT-PCRの特異度は100%だったが、感度は36%と低かった。FIPで眼症状を呈する症例から採取した房水サンプルについては、さらなる研究が必要です。

 
											 
						 
					 
						 
					 
				
 
				

 
					 
				 
					 
				
