10.FIPの抗ウイルス治療
レムデシビルの有効成分であるアデノシンヌクレオシドアナログGS-441524は、FIP治療に革命をもたらした。ウイルスRNA依存性RNAポリメラーゼを阻害し、ウイルスRNA転写を終結させる。 GS-441524の認可製剤は英国やオーストラリアにあり、その輸入を合法的に認めている国では使用できる。
すべての抗ウイルス治療において、成長期の子猫や体重減少した成猫など、回復に伴い体重が増加した場合、適切な投与量を維持することが重要である。投与量が不足し、病気の再発につながる可能性があり、正確な体重記録は重要である。
GS-441524
ウイルスのRNAポリメラーゼのRNA鎖を終結させるヌクレオシド類似体で経口または皮下投与する。皮下注射はしばしば刺痛を引き起こす。ウェットタイプで81%や82%の生存率、混合型FIP猫で85%の生存率、ドライタイプで94%の生存率が報告されている。高価だが経口投与により服薬遵守が容易になっており、経口投与された18匹で100%の有効性が示された。ほとんどの研究では84日間の治療コースが使用されている。一過性のALT値の上昇、リンパ球増加症、および好酸球増多症などの副作用が報告されている。経口投与の最適な頻度は通常、12時間ごとに分割して投与される。
英国およびオーストラリアでのみ認可製品があり、獣医用に調合された製剤として入手可能である。標準投与量として、10~12 mg/kg を 24 時間ごと、眼症状(15 mg/kg を 24 時間ごと)または神経症状(10 mg/kg を 12 時間ごと)ではより高投与量が使用される。多くの臨床試験では 84 日間の治療期間だが、臨床症状や血清生化学検査が正常化しない場合は、治療期間を延長したり、投与量を増やしたり(5 mg/kg/日ごと)することができる。正常化後も 14 日間治療することを提案する臨床試験もある。痛みを伴う皮下注射のため、経口投与が推奨され、通常、空腹時に、少なくとも食事の30分前に投与する。
モルヌピラビル
ヌクレオシドアナログの経口剤であり、FIPの第一選択薬、またはGS-441524投与後の再発例に対する救済治療薬として有望である。副作用は耳介や口ひげの折れ、白血球減少症が言われているが非常に少ない。推奨用量は12~15 mg/kgを12時間ごとに84日間投与する。
レムデシビル
GS-441524のヌクレオシド類似体でプロドラッグである。皮下注射または静脈内注射で投与する。レムデシビルによる導入療法に続いて皮下注射または経口投与のGS-441524を投与したところ、滲出性または非滲出性FIPの猫28匹において、6ヶ月時点での生存率は86%であった。レムデシビルに続いてGS-441524を84日間経口投与した群(n=24)と投与しない群(n=6)を比較したところ、それぞれ96%および33%の生存率を示した。 皮下注射は疼痛をともなうため、継続に問題がある。用量は6~20 mg/kg q24h(導入用量10~15 mg/kg、維持用量8~15 mg/kg)眼型または神経型のFIPには20 mg/kg q24hで投与された。
GC376
3Cプロテアーゼ阻害薬で、ウェットタイプに有望な結果が得られたが、まだ上市されていないため、将来的にはFIP治療薬として認可されることを期待する。
他にも数種類の薬剤について記載されているが、European Advisory Board on Cat Diseasesに推奨されていないので割愛する。
みや動物病院