猫の感染性腹膜炎(FIP)に関する欧州のガイドライ(14) Feline Infectious Peritonitis: European Advisory Board on Cat Diseases Guidelines
血液の抗体検査
血清中のFCoV抗体検査は、ELISA法、間接蛍光抗体法(IFA法)、または迅速免疫移行試験法(RIP法)で実施される。
FCoV抗体検査が陽性であることは、猫がFCoVに感染し、抗体を産生したことを示す。抗体陽転は通常、自然感染後7~28日程度で起こり、FIPの猫はFIPでない猫よりもFCoV抗体価が高い傾向があるが、抗体価を使用してFIPを区別することはできない。
抗体価は血清希釈倍数で測定され、開始希釈度が25倍以下の検査のみが推奨される。
測定できるのはFCoVに対する抗体なので、FIPに対する抗体検査ではないことに注意する。
腹水の抗体検査
FIPの腹水サンプル28検体のうち70%が陽性であったのに対し、FIPのない猫の腹水サンプル15検体では陽性反応が全く出なかった。RT-qPCRで測定したFCoV RNA量とFCoV抗体の間に逆相関が認められた検体もあり、FCoVが抗体に結合し、抗体検査においてリガンドとして利用できなくなる可能性が示唆されている。
髄液の抗体検査
FIPの猫の髄液サンプルを用いてFCoV抗体検査が行われてきたが、結果は様々であった。血清と髄液中のFCoV抗体価の比較から、髄腔内FCoV抗体産生が示唆され、FIPの診断に有用であると報告されたが、この研究には対照群は含まれておらず、別の研究では、血清と髄液中のFCoV抗体価の間に有意な相関が認められ、検出された髄液中のFCoV抗体は血液由来であり、FIPの診断には有用ではないことが示唆された。