猫の感染性腹膜炎(FIP)に関する欧州のガイドライ(16) Feline Infectious Peritonitis: European Advisory Board on Cat Diseases Guidelines
FIPの予後
効果的な抗ウイルス治療が利用可能になる前、FIPの猫は発症後数週間以内に死亡または安楽死させられていた。
ウェットタイプの猫43頭を対象に、グルココルチコイドを全身投与(2mg/kg/日)または腔内投与した前向き研究では、確定診断後の生存期間の中央値はわずか8日であった。 胸水のある猫では発症後21日、胸水のない猫では38日という中央生存期間が報告されている。若い猫や胸水のある猫では、高齢の猫や胸水のない猫よりも生存期間が短い。予後不良因子は高ビリルビン血症、全身状態不良、血小板減少、リンパ球減少、ヘマトクリット減少、ナトリウム減少、カリウム減少、AST活性増加、および多量の胸水であった。
最近では、プレドニゾロンを他の治療と併用すると、FIPの転帰が悪くなるという指摘もあるが、特に抗ウイルス薬投与下におけるグルココルチコイドのFIP治療への影響については、さらなる研究が必要である。
近年、FIPにヌクレオシド類似体GS-441524などの有効な抗ウイルス薬が利用可能になったことで、安楽死以外どころか、しばしば治癒可能な疾患となった。これらの抗ウイルス薬は効果発現が迅速であるため、診断が確定していなくても、FIPの可能性が高い猫に対して、治療を試みることが可能になった。迅速かつ持続的な治療反応は、FIPの診断を裏付ける有力な証拠となる。これらの抗ウイルス薬は高価な場合が多いため、飼い主との相談時には、費用についても十分に説明する必要がある。





