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- 2025.10.05
猫の感染性腹膜炎(FIP)に関する欧州のガイドライ(18) Feline Infectious Peritonitis: European Advisory Board on Cat Diseases Guidelines
10.FIPの抗ウイルス治療
GS-441524の初期試験
GS-441524のFIP治療における有効性に関する初期の研究で、実験的にFIPを誘発した10頭の若い猫において、GS-441524(2 mg/kgまたは5 mg/kgを24時間ごとに皮下投与)は、10頭すべての猫において臨床症状の急速に改善し、治療開始から2週間以内に健康な状態に回復した。2頭は、治療後4週間と6週間に再発し2回目の2週間のGS-441524治療に反応した。感染後8ヶ月以上経過した発表時まで、すべての猫は臨床的に健康であった。注射部位の疼痛以外は、副作用は認められなかった。 自然発症FIPの31頭、平均年齢は14ヶ月(範囲3~73ヶ月)を対象としたフィールド臨床試験ではGS-441524の初回治療として、2mg/kg SC q24h 84日間で治療し、再発した場合、投与量を4mg/kg SC q24hに増量した。この研究では、倫理的に未治療群は設定せず、5/31頭は治療開始後26日以内に死亡または安楽死となった。26/31はGS-441524による治療開始後14日以内に急速な臨床的改善を示し、84日間以上の治療期間を完了した。18/26は健康を維持したが、8/26は治療後平均(範囲)23(3~84)日で再発した(6/8は非神経型、2/8は神経型)。4/8はGS-441524 2mg/kg SC q 24時間で再治療され、1/4は、2回目の治療開始から2週間後に神経型FIPが再発し、安楽死となった。2/4は反応を示したものの、さらに再発したため、4 mg/kg SC q24hで治療された。1/4は完全な反応がなかったため治療が延長され、4 mg/kg SC q24hに変更された。再発した4/8には、高用量4 mg/kg SC q24h投与が直ちに行われ、全匹が反応を示した。フィールド臨床試験に参加した25/31(81%)が長期生存した。
別の研究では、神経および眼型の4 頭の猫に GS-441524 を 5~10 mg/kg SC q24hの高用量で 84 日間以上投与し、3/4 (2 /3は 5 mg/kg SC q24h、1/3 は 10 mg/kg SC q24hへ漸増投与)は治療開始から 354~528 日後に生存しており、1/4は完全寛解(5 mg/kg sc q24h)できず、治療中止後に急速な臨床症状が悪化し、注射疼痛もあり安楽死となった。
別の研究では、神経および眼型の4 頭の猫に GS-441524 を 5~10 mg/kg SC q24hの高用量で 84 日間以上投与し、3/4 (2 /3は 5 mg/kg SC q24h、1/3 は 10 mg/kg SC q24hへ漸増投与)は治療開始から 354~528 日後に生存しており、1/4は完全寛解(5 mg/kg sc q24h)できず、治療中止後に急速な臨床症状が悪化し、注射疼痛もあり安楽死となった。
経口GS-441524による治療中の18頭のFIPでは、糞便、血液、および滲出液中のFCoV量が減少した。血液と滲出液中のウイルスRNA量には相関が見られたが、糞便中のウイルスRNA量には相関がなかった。血中FCoV RNA濃度は急速に低下し、治療開始14日目には全ての猫で陰性となった。この研究では、最大1年間、12週間の追跡調査が行われ、治療終了12週間後では18/18、24週後15/18、36週後に14/18でデータが採取された。全例においてFIPの再発はなく、血中FCoV量も検出下限未満であったが、糞便中のFCoV排出の再発は5/18で検出された。
ウェットタイプのGS-441524治療による生存率は、血清ビリルビン濃度と相関しており、T-Bil 0.5mg/dl未満で97%生存、0.5<1.0mg/dlで89%生存、1.0<2.0mg/dlで75%生存、2.0<4.1mg/dlで50%生存、4.1mg/dl以上で14%の生存率であった。
FCoV 抗体価は、FIP から回復したほぼすべての猫で、数年後も高いままである。しかし、別の研究では、FCoV 抗体価は14/18 で低下し、治療開始後 28 日、56 日または 84 日で低下が検出された。
393頭の大規模なオーナー情報を解析した後ろ向き研究では、84日間、88%が治療開始から1週間以内に猫の臨床症状の改善を確認し、54%が治癒したと回答し、43%は生存していると回答した。FIP関連の再発した猫は13%で、死亡した猫は3%であった。
GS-441524はFCoV排出を阻止するためにも使用されている。