10.1.2. レムデシビル
レムデシビル(GS-5734)は、SARS-CoV-2によるCOVID-19のヒト治療薬で、欧州連合と英国では、FIP治療薬として承認されている他の薬剤がない場合、獣医師はレムデシビルを合法的に処方することが認められている。
レムデシビルはGS-441524のプロドラッグであり、細胞内変換後に活性型GS-441524になる。
Cogginsら(2023)のレムデシビルの治療プロトコル。
滲出性 導入期 10 mg/kg q24h iv or sc 4days 維持期 8~10 mg/kg q24h sc 84日間まで
非滲出性 導入期 15 mg/kg q24h iv or sc 4days 維持期 10~12 mg/kg q24h sc 84日間まで
神経型または眼型 導入期 15 mg/kg q24h iv or sc 4days 維持期 12~15 mg/kg q24h sc 84日間まで
レムデシビルとGS-441524の比較研究
15/32頭のウェット型とドライ型 7/32頭の治療成績を検討した研究では、30/32にレムデシビルが投与され、6/30レムデシビル単独投与、24/30はレムデシビルから経口GS-441524に移行した。レムデシビル単独投与の4/6が死亡したのに対し、併用治療では1/24が死亡した。しかし、解釈は重要で、単独投与で死亡した3/4は治療開始から2日以内に死亡し、残りの1匹は治療開始から13日後に死亡したことから、併用群の予後不良は低血糖とラグドール種に関連していると考えられた。
オーストラリアの後ろ向き研究では、15/28がレムデシビル単独、13/28がレムデシビルから経口GS-441524に移行し、少なくとも84日間治療された。24/28(86%)が6ヶ月まで生存した。3/28は2日以内に死亡し、2日以上生存した24/25(96%)が6ヶ月まで生存した。10/25では治療期間の延長が必要であり、5/25は再発が疑われたため5 mg/kgの用量増加した。3/5は、2回目の84日間の再治療を行なった。全体の再発率を30%で、当初の治療は導入用量として10 mg/kg q24h 4days iv、維持用量として6 mg/kg(眼または神経型は10 mg/kg)を最低84日間、24時間ごとに皮下注射で投与した。その用量が不足していると考えられ、Cogginsら(2023)のレムデシビルの治療プロトコルに従って、レムデシビルの高用量に変更され再発しなかったことから、レムデシビルの適切な用量と経口治療プロトコルが有用と結論づけた
発熱と食欲不振は 1 週間以内に解消され、黄疸、滲出液、眼の変化は治療開始後 2~4 週間以内に解消された。体重を2 週間ごとにモニタリングすることは、治療評価と体重増加対する適切な用量維持に重要であった。高ビリルビン血症、高タンパク血症、白血球異常は2~3週間以内に正常化したが、高グロブリン血症は正常化するまでに約5週間を要した。
レムデシビルやGS-441524の注射剤の皮下注射は、2/25で重度の疼痛、13/25で軽度の不快感を引き起こし、それが原因で、経口薬に変更した。対応策として、注射前のガバペンチン、注射部位のローテーション、レムデシビルを室温に戻す、局所麻酔薬の使用、経粘膜ブプレノルフィンなどが役立つ可能性がある。
10.1.3. モルヌピラビル
モルヌピラビルはEIDD-2801としても知られ、ヒトのCOVID-19の治療薬で、FIPに対しては、モルヌピラビル12~15 mg/kg PO 12時間毎の投与量を12~13週間投与したところ成功したと報告されており、投与量範囲の上限は神経学的徴候を示す猫の治療に使用された。28/30ga
生存しており、副作用はほとんど報告されなかった。
セクション10及び11の他の治療方法は、情報が生かせないので割愛します。
みや動物病院