猫の慢性口内炎:臨床管理における最新概念②

J Feline Med Surg. 2023 Aug 7;25(8)
Feline chronic gingivostomatitis current concepts in clinical management
Maria Soltero-Rivera et al

introduction
猫の口内炎は、最大26%の猫に発生する慢性的な口腔疾患で、口蓋舌側部を含む口腔全体に広範囲にわたる炎症性病変を形成する。 口内炎には潰瘍型と増殖型があり、両方の病型を示す猫もいる。通常、中等度から重度の痛み、食欲不振、グルーミングの減少、社会性の低下を示す。治療への反応が不十分であったり、経済的な問題で、安楽死になることもある。

文献的に最近では免疫介在性疾患であると言われており、免疫応答がネコカリシウイルスと何らかの形で関連している。抜歯療法で治らない場合は症例ごとに、個々の患者に合わせた治療を行うことが必要である。

現在、猫の慢性歯肉口内炎は免疫介在性の疾患であり、その免疫応答は猫カリシウイルス感染に関連している。外科的処置や様々な臨床管理について記述するとともに、抜歯治療に反応しない症例の管理には、個別化医療のアプローチが適切である。

局所的な宿主反応
慢性口内炎の粘膜上皮は、過形成を示し、潰瘍形成直下の粘膜下組織において、好中球が集簇して観察され、肥満細胞の増加も報告されている。その粘膜には、リンパ球と形質細胞の高度な浸潤を特徴としている。
病因
FCVは口内炎猫の23頭中21頭から検出された一方、対照群の猫からは1頭も検出されなかった。抗ウイルス作用を持つ遺伝子の発現量が、対照群と比較して口内炎群で約40倍高かった。しかし、口腔咽頭スワブのリアルタイムRT-PCR検査で評価したFCVウイルス量は、口腔病変の重症度や治療成績とは相関しない。
FIVおよびFeLV感染の口内炎の治療成績を比較した研究では、感染の有無によって表現型が異なることや、全顎または部分抜歯に対する反応に違いがあることが示された。
多頭飼育の方が単頭飼育と比較して、口内炎発症のオッズが7倍高い。
臨床管理
ほぼ全例で中等度から重度の歯周炎および歯牙吸収が認められるため、抜歯が治療の出発点となる。抜歯によって慢性炎症を効果的に軽減できれば、著しい改善や治癒さえも期待できる。
しかし、抜歯が口腔粘膜からの猫カリシウイルスの減少や排除とどのように関連しているのかは、現時点では不明で、抜歯によって、歯肉縁下マイクロバイオームが除去され、それによって炎症負荷が軽減されるとともに、免疫系が併発している慢性ウイルス感染症への対処に専念できるようになるという可能性や、炎症が軽減されることで、ウイルスが増殖しにくい環境になる可能性がある。
術前評価
全顎または部分抜歯を計画する際には、比較的長時間の麻酔リスクについて評価を行う必要があり、さらに、予後に影響を及ぼす可能性があるため、猫白血病ウイルス、猫免疫不全ウイルス、猫カリシウィルスのウイルス検査を実施すべき。
外科的治療
抜歯の成功率は1997年に初めて報告され、中等度から重度の歯周炎では最大93%、歯牙吸収および残存歯根では最大66%で有効であった。
1997年の研究では、96.8%が部分抜歯で治療され、治療後11〜24ヶ月の追跡調査において、80%の猫(30頭中24頭)で有意な改善または臨床的治癒が認められた。2015年の研究では、「著しい臨床的改善」で39%(95頭中37頭)、「口内炎の完全消失」で28%(95頭中27頭)であった一方で、33%の猫(95頭中31頭)が抜歯に反応しなかった。外科的治療の結果、改善〜寛解した症例に対しても、術後2週間以上の、抗菌薬、抗炎症薬、または鎮痛薬による内科的管理が必要であった。部分抜歯と全顎抜歯の間に有意差はなかった。
内科的管理
疼痛管理
アマンタジンは、ヒトで抗ウイルス薬として使用、猫では慢性疼痛管理において、NMDA受容体拮抗作用を介して有効性が示された。3~5 mg/kg q24h PO
ガバペンチンは、ガンマアミノ酪酸の構造類似体であり、電位依存性カルシウムチャネルに対して抑制作用を持つ。猫の筋骨格系疼痛および神経障害性疼痛に一般的に処方される薬剤。5~10 mg/kg q12h PO.
NSAIDは急性期に検討され、メロキシカム(0.01~0.05 mg/kg q24h PO)およびロベナコキシブ(1~2 mg/kg q24h PO)
ウシラクトフェリン経口スプレー(6 mg/頭、12時間ごと)とピロキシカム(0.3 mg/kg、経口、隔日投与)の併用療法について、無作為化二重盲検臨床試験で検討が行われ、その結果、77%の猫で臨床症状の有意な改善が認めらた。
抗菌薬
抗菌薬による治療は、急性期および/または二次感染が認められる場合にのみ推奨され、アモキシシリンで治療された猫の38%、メトロニダゾールで治療された猫の37%で改善が認められた。されます。
術後に短期間(5日間)の抗菌薬投与を行う方針をとっており、アモキシシリン・クラブラン酸カリウム:13.75 mg/kg、経口、12時間ごと;クリンダマイシン:5~11 mg/kg、経口、12時間ごとを投与している。
免疫抑制療法
ステロイド治療により、約23%の患者で完全治癒または著明な改善が認められたものの、長期投与に伴う有害な副作用の可能性を考慮し、漸減や救済的治療として限定使用にすること。
シクロスポリンを抜歯処置を既に受けた9頭にシクロスポリンを経口投与した無作為化二重盲検プラセボ対照前向き臨床試験では、6週間で臨床的改善が認められた割合が、治療群で9頭中7頭:77.8%、プラセボ群で7頭中1頭:14.3%で有意に高かった。3ヶ月以上の長期観にわたりシクロスポリンの投与を受けた11頭の45.5%(5頭)が臨床的に治癒した。さらに、難治性慢性口内炎の猫において、全血中シクロスポリン濃度が300 ng/mlを超えると、口腔内炎症の有意な改善と関連することが示されています。44 抜歯前にシクロスポリンによる治療を行うことについても少数の8頭では、50%の猫で臨床的寛解が得られた。
著者らは、外科的介入を伴わない免疫抑制療法の実施は推奨していない。
免疫調節療法
免疫調節療法は、外科的治療に反応しなかった症例に対して適用され、組換えネコインターフェロン-オメガの口腔粘膜投与では、55%で中等度の改善が、45%で著明な改善が認められた。
口内炎があり、かつレトロウイルス(FIV/FeLV)またはFCVへの感染例おいて、組換えネコインターフェロン-オメガ療法が有効な役割を果たす。
難治性口内炎を対象に、自家および同種由来の脂肪由来間葉系幹細胞の静脈内投与では、それぞれ最大57%および71%に臨床症状の改善や寛解が認められた。抜歯処置を行わないと治療反応は認められない。
猫ちゃんの口内炎の論文で、比較的新しいものです。分割して訳していきます。非常に痛みの激しい消耗性の疾患ですので、猫ちゃんはかわいそうです。当院では、抜歯を行い治療をさせていただいています。その抜歯時には、歯根を残さないのが大原則です。残根してしまい、治っていない猫ちゃんにも対応させていただきます。お気軽にご相談ください。
みや動物病院