◯最初に、当院にお越しになった経緯と、治療させていただいた経過について説明いたします。

初診日 他の動物病院で腹水が見つかり、FIPを疑い腹水のPCR検査中に来院なさいました。体重は2.92kgで痩せていました。結果待ち中でしたが、PCR検査以外はFIPを強く疑う初見だったことと、欧米のFIPガイドラインでは、症状だけでもモルヌプラビルを投与しても構わないと記載されており、飼い主様のご希望もあり、治療を開始しました。

10日後 腹水がなくなり、体重が2.76kgにかるくなりましたが、体調は良かったようです。

24日後 元気も食欲もあり、体重は3.34kgまで増加しました。

36日後 非常に元気で、さらに体重が増え、3.65kgになりました。

79日後 体重は4.0kgになり、腹水もなく、猫ちゃんの炎症マーカーのSAA低値でした。84日まで投薬して完治といたしました。

◯ここからは実際に治療に取り組んでいただいた飼い主様のお気持ちを伺ったものです。

[猫伝染性腹膜炎になって怖かったこと] 当初皮膚炎の治療を行っていた為体重減少等の症状を、今後治療が進めば改善されるであろうと見送っていた為、FIPが発覚した時点で症状と衰弱が進行してしまっており、投薬治療が間に合うのか? 治ってくれるのか? という恐怖が常にありました。

[症状で辛かったこと] 発覚直前直後は食欲が完全に無くなっており、食事を受け付けず日に日に痩せて行った点と腹水の影響で下痢になり、弱っていた為かトイレ以外の場所で隠れて排泄
する為、日に何度も下痢まみれになり、尻周辺がただれて毛が抜けてしまいました。

[ご不安だったこと] 重複しますが発覚が遅れてしまった為に投薬の効果が現れ回復するまでの期間、手遅れだったのでは?という不安がありました。後、治療可能になって日が浅い病気という事で、今の薬で寛解まで行けないのでは無いのか? 他の薬を選択するべきだったのでは? という結果待ちの不安も常にありました。

[お薬の飲みやすさ] カプセルが大きく失敗すると少しずつ溶けて行く為、上手にあげる方法が見つかるまで少し苦労しましたが、毎日繰り返す内に人も猫も習慣化したのか、一月も経たぬ間に特に苦もなく投薬出来るようになりました。

[薬を飲んでからの反応] 効果が現れ自発的に食事を摂る事が出来るようになりました。カプセルに食欲を増す薬も入れて頂いていた為か、食事量の増加に比例して日に日に活動的になり、体重も日増しに回復していきました。

[反応が出るまでの時間] 投薬前はちゅーる等のおやつも受け付けない状態でしたが、投薬後5日程度でキャットフードを食べれるようになりました。腹水が収まるまでには10日前後掛かるとのお話通り、再来院時の検査では腹水も収まっていました。

[治療コスト] 以前のかかりつけ病院で受けたFIP関係の検査費用が2回で5万5千円、みや先生での検査、薬代等の費用が7回で9万8千円で、合計が15万8千円でした。

[今の猫ちゃんの体調] おかげさまでFIP発症前より体重も増え、夜中は元気に走り回っています。発症前にあった舐性皮膚炎の症状も以前より軽減されたので経過観察中です。

[FIP猫ちゃん飼い主さんに向けて] FIPは投薬以外延命方法が無い病気で、治療可能になって日が浅い為に情報も少なく、薬によっては法外とも思える価格だったりと、おそらく皆さんが同じ不安を抱えられた筈です。どの治療法にも一長一短があり途方に暮れた折に、我々は幸いにしてみや先生のブログを拝見して、藁にもすがる思いで相談して助けて頂けました。モルヌピラビルが今後の治療の主流になり、FIPで大事な家族をかわいい盛りに失う辛さや、金銭面で助けられなかったと言う思いをされる方が、今後劇的に少なくなって欲しいと願っております。

[全体の感想] トリコモナスと皮膚炎と言う前歴からの治療中で、FIP発覚が遅れ、薬の反応が出るまで毎日が不安でしたが、三ヶ月の投薬期間を無事に乗り切る事が出来、今は寛解してくれて良かった、薬が合ってくれて良かった、という言葉に尽きます。先生には心の底から感謝しております。改めましてわおんを助けて下さりありがとうございました。

◯治療させていただいて

治療終了後も元気なご様子で、本当に良かったですね。その後も治療させていただいた猫ちゃんたちは全頭治っています。また、幼少期に腸管コロナ陽性の子猫ちゃんに対してモルヌプラビルを投与し、1週間で陰転化することもわかりました。体内でウィルス変異をする前に除染するのも、今後の新しい取り組みと感じています。モルヌプラビルの登場により、適正な値段でFIPを治療できる様になり、今後も助かる猫ちゃんが増えることを心よりお祈りいたします。

最後に、FIPで苦しむ猫ちゃんとその飼い主様の希望になる素敵なご感想をありがとうございました。お大事になさってください。

みや動物病院