犬のアトピー性皮膚炎に対する糞便細菌叢移植の有効性に関する論文
Pilot evaluation of a single oral fecal microbiota transplantation for canine atopic dermatitis.
犬のアトピー性皮膚炎に対する単回の糞便細菌叢移植の有効性に関する初期調査
Koji Sugita et al. Sci Rep. 2023
腸内細菌叢は、犬のアトピー性皮膚炎の病因に関与していることが示唆されているものの、そのバランスは十分に解明されていない。 また、アトピー性皮膚炎の犬における糞便細菌叢移植の有効性は依然として不明である。そこで、アトピー性皮膚炎の犬の腸内細菌叢を解析し、一回の糞便細菌叢移植が臨床症状と腸内細菌叢に及ぼす影響について初期評価することを目的とした。
アトピー性皮膚炎の犬 12 頭と健康な犬 20 頭の腸内細菌叢のRNA 解析により、両群の腸内細菌叢に有意な差があり、一回の糞便細菌叢移植は犬アトピー性皮膚炎の重症度指数を有意に減少させた。これらの知見から、腸内細菌叢がアトピー性皮膚炎の病因において極めて重要な役割を果たしており、糞便細菌叢移植がアトピー性皮膚炎の腸内細菌叢を標的とする新しい治療方法となる可能性があることを示唆している。
Materials and methods:アトピー性皮膚炎と診断された 12 頭の犬を用いた。2 か月前から研究期間中も抗生物質は投与しなかった。 年齢、性別、品種が一致した 20 頭の健康な犬を健康対照群とした。糞便提供犬は、ドナーA:11歳、雄、ビーグル、体重12.4kg、ドナーB:5歳、雄、ビーグル、体重11.3kgを用いた。ドナー犬にはヒルズのサイエンス ダイエット アダルトを給仕し、自由飲水とした。 ドナー犬には臨床上健康で、全血球計算、血清生化学分析、X線検査、腹部超音波検査、糞便検査に異常はなく、IDEXX 下痢パネル検査も正常であった。
糞便細菌叢移植は、単一群の非盲検臨床試験で行なった。ドナー犬から自然に排泄された糞便を収集した直後に、それらを水道水と混合し、医療用ガーゼで2回ろ過し、注射器を使用して経口投与した。 糞便の投与量は 4 g/kg (範囲 2 ~ 12 g/kg) で、投与された平均糞便溶液は 26 mL/頭 (範囲 15 ~ 50 mL/頭) であった。 皮膚病変、そう痒症、投薬スコア、および糞便微生物叢を移植前後で比較・解析した。
Adverse events:移植を受けた4/12 頭に 1 ~ 3 日間、軽度の軟便が認められた。
論文中では腸内細菌叢の解析や、アトピーの重症度スコア、掻痒スコアなどを移植前後で比較しており、犬のアトピー性皮膚炎の今後の治療に新しい知見が得られたと感じました。より有効な移植回数や、移植間隔、投与量などが明らかになると応用しやすいと思われます。