この論文は、2021年にArnon Gal 等が Public Library of Scienceに投稿、掲載されたものです。One dog’s waste is another dog’s wealth: A pilot study of fecal microbiota transplantation in dogs with acute hemorrhagic diarrhea syndrome.と書かれており、日本語のタイトルは「1頭の犬の排泄物が、他の犬にとっては宝となる: 急性出血性下痢の犬における糞便微生物叢移植の小規模研究」といったところでしょうか。

目的:単回の糞便微生物叢移植(FMT)が犬の出血性腸炎の臨床スコアと糞便微生物叢に及ぼす効果を決定することを目的とした。

材料と方法:4頭の健常犬と7頭の出血性腸炎の犬を用いた。症例群は結腸内視鏡で生検し、健常便の移植を行った。入院中に腸炎のスコアをつけて評価した。組入前に非ステロイド性抗炎症薬、ステロイド、抗生物質の投与症例や 糞便中の寄生虫陽性症例は除外された。
糞便ドナー犬の選別方法は、毎年のワクチン接種、6ヶ月ごとの駆虫薬と検便を実施、糞便収集前3か月間の嘔吐、下痢または抗生物質による治療歴が無く、移植の4週間以上の正常な体調を確認した。
ドナー便の準備:治療の朝に自然排泄された直後に、ビニール容器に入れ、氷上で冷却し、収集から6時間以内に使用する。糞便は生理食塩水を1:4になる様に加えて懸濁液を作成し、滅菌したふるいを通して移植便液を作成した。
レシピエントの準備:鼻にカテーテルを挿入し、ビサコジルを20mgを4ml/kgの湯で希釈して投与し、4ml/kgのぬるま湯を8時間前までに6回投与して洗腸を行った。
便移植の実際:洗腸後24時間以内に全身麻酔下で腸生検を行い、その後、10~15ml/kgの便希釈液を近位結腸に注入した。
評価方法:全ての便1mlのmRNA解析を実施し、病理組織検査、臨床スコアなどの統計解析を実施した。
結果:全ての犬は急速に回復し、3日後に退院とした。退院後30日の調査では、全ての犬は良い便を排泄していた
詳しい便の解析データ等は割愛しますが、臨床的には有効であったと結論付けています。
この論文では、麻酔下での内視鏡による腸生検と同時に移植を行っています。副作用がないので、検査と治療が同時に行えて非常に合理的と感じました。
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