Commentary on key aspects of fecal microbiota transplantation in small animal practice.

Jennifer Chaitman et al.  2016:7 71–74. Veterinary Medicine: Research and Reports.

小動物臨床における糞便細菌叢移植の概説

適応症:現在、小動物に糞便細菌叢移植を実施するためのガイドラインはなく、消化器疾患を治療する選択肢が他にない場合、適用を検討することがある。 人の医療における現在の適用疾患は再発性クロストリジウム・ディフィシル感染症である。小動物における糞便細菌叢移植は腸管の変化や腸内細菌叢の異常に関連するあらゆる疾患の健康を改善する可能性があるが、 医学的に裏付けのあるデータは再発性クロストリジウム・ディフィシル感染症についてのみ存在し、炎症性腸疾患などの他の疾患に対する糞便細菌叢移植の使用は科学的証拠によってまだ十分に証明されていない。

ドナーの選択:現在のところ、ドナー選別の標準化された方法はない。糞便細菌叢移植に関する論文で明記されている条件は、一般状態が悪い、肥満、ワクチン未接種、3ヶ月以内の抗生物質の使用歴、アトピーまたは食物アレルギーのある動物、細菌・ウイルス・真菌・寄生虫を含む腸内病原体への感染、などが挙げられる。

移植液の準備:こちらに関しても、さまざまな技術が記載されており、人間のプロトコールでは、糞便(約 50 g)を通常の滅菌生理食塩水(約 250 mL)と良く混合し、茶こしでろ過し、内視鏡の生検チャンネルやチューブに詰まる可能性を低下させている。 さまざまな量(約 300 ~ 700 mL)の糞便の結腸への注入が使用されているが、糞便をカプセルに入れて経口的に移植することにもに成功している。

投与方法:糞便細菌叢移植は、経口(鼻十二指腸挿管および小腸内視鏡検査)または大腸内(浣腸および結腸内視鏡)のいずれかで実施される。 経口糞便細菌叢移植は実施が容易だが、大腸までの到達時間や、胃および小腸での微生物の生存率が不安定要素である。 305 人のヒト患者を対象とした 14 件の研究のメタ分析では、下部消化管経由の糞便細菌叢移植は、上部消化管経由と比較して再発性クロストリジウム・ディフィシル感染症の治療に効果的であることが実証された。 獣医学では研究に基づいたデータが存在しないが、 結腸内視鏡による移植では上行結腸、回腸、盲腸への投与を容易にし、同時に結腸生検を行うことも可能である。  注入された移植液は、生着率を高めるために、可能な限り長く腸管内に留まる必要がある。 浣腸で投与する際は鎮静で十分である。 腸蠕動を抑制する薬剤は、下痢の原因に感染症がある場合には推奨されない。 移植前に浣腸を施す必要性については議論の余地があり、免疫抑制剤の併用は結果に影響しない。

安全性:小動物における糞便細菌叢移植関するデータは少数であるため、安全性を判断することは不可能だが、人おける副作用は極めて稀である。潜在的な副作用としては、病原菌の直接感染が考えられる。

結論:ヒトの特定の胃腸疾患をに対する 糞便細菌叢移植の利点については疑いの余地がないが、 小動物医療に関する科学的データは非常に限られてる。 新たな臨床試験により、客観的な科学的証拠に基づいた、実践的な糞便細菌叢移植法が確立することを望む。

みや動物病院