猫の感染性腹膜炎(FIP)に関する欧州のガイドライン④ Feline Infectious Peritonitis: European Advisory Board on Cat Diseases Guidelines
免疫
FIPの発症は、ナチュラルキラー細胞と制御性T細胞の獲得性細胞性免疫の抑制と関連している。FCoV感染において重要とされているのは、獲得性細胞性免疫の調節因子であるインターフェロンガンマ(IFN-γ)である。FCoV に感染した無症状の猫の末梢血白血球では IFN-γ mRNA の発現が高く、FIP になってしまった猫では低下し、獲得性細胞性免疫が抑制される。FIP関連FCoVへの曝露によりT細胞応答を測定した研究では、FIPに抵抗性を示す猫では、FIPの進行が速い猫と比較して、暴露後に抗ウイルスT細胞応答が見られたことからも示唆された。
FIPに対する体液性免疫の役割は明確ではなく、移行抗体は、子猫が約5~6週齢になるまで防御効果を発揮し、6~8週齢までにその効果は低下する。 また、FCoVに対する抗体は、感染後7~28日で増加し、数ヶ月から数年かけてゼロに低下する。すでに抗体を持つ猫に実験的に感染を起こすと、FIPの進行が早まり、生存期間が短縮する、いわゆる抗体依存性感染増強が認められることから、ワクチン開発に対する懸念事項であると結論付けられている。