Fecal Microbial and Metabolic Profiles in Dogs With Acute Diarrhea Receiving Either Fecal Microbiota Transplantation or Oral Metronidazole.

「糞便細菌叢移植もしくは経口メトロニダゾールが急性下痢の犬の腸内細菌叢や代謝に及ぼす影響について」

Jennifer Chaitman et al. Frontiers in Veterinary Science. 2020.

Introduction:動物病院では急性下痢に対して 50 ~ 71% で抗生物質が投与されているが、その有用性や潜在的な悪影響については明らかにされていない。抗生物質が腸内細菌叢を変化させ、微生物の多様性の低下、特定の細菌分類群の存在量の変化、代謝の変化を引き起こすことが示されており、一部の患者では抗生物質は下痢の発症に関連しているとさえ言われている。 また、幼少期の抗生物質の使用は炎症性腸疾患やアトピー または肥満のリスクを増加させるとも言われている
糞便細菌叢移植は、下痢を患っているヒトを対象として広く研究されており、抗生物質が効かないクロストリジウム ディフィシル感染症の治療において高い成功率を示してる。 犬においてもパルボウイルス感染症 、特発性炎症性腸疾患、クロストリジウム ディフィシル感染症での報告がある。
健康な動物における抗生物質の腸内細菌叢に対する影響を評価した研究はあるものの、腸疾患の細菌叢の正常化につながるかどうかはほとんどわかっていない。 。そこで、急性下痢の症例にメトロニダゾール投与と糞便細菌叢移植を実施し、治療効果と細菌叢の変化について検討した。

MATERIALS AND METHODS

研究形式:前向き治療試験 書面によるインフォームドコンセント

症例:発症14日以内の急性下痢の犬18頭、身体検査、糞便検査、下痢パネルを実施した。除外基準は、重度の脱水症状、39.5°Cを超える高体温、頻脈、頻呼吸、全身状態不良、入院の必要性、腸内寄生虫、慢性の胃腸症状、抗生物質または非ステロイド性抗炎症薬、コルチコステロイドの投与歴とした。 糞便サンプルは、0日目、7日目、28日目に収集し、-20°C で冷凍保存した。

対照健康犬:すべての健康な対照犬は胃腸の症状や抗生物質の投与歴がないものとした。

糞便ドナー犬:雑種、3歳、去勢済み雄、胃腸疾患の病歴も抗生物質による治療歴もなく、糞便も正常で、寄生虫、腸内病原体について検査された 。 採取した便は、日付を記載し、移植まで -20°C で冷凍保存した。

治療
急性下痢の犬(n = 18)は、糞便細菌叢移植群(n = 11)とメトロニダゾール群(n = 7)に分けられた。

糞便細菌叢移植群の 10 頭の犬には、5 g/kg の凍結ドナー便を 1 回投与し、 1頭は、移送日の利用可能な糞便が不足し、2.5g/kgで実施した。 糞便は小型犬では60ml、大型犬では120mlの生理食塩水と混合し、ブレンダーで約5分間混ぜ合わせ、60mlの注射器に12Frのカテーテルを取り付け、カテーテルの先端まで移植液を満たし、菌に影響しない潤滑剤を少量塗布し、結腸に挿入し移植した。移植直後の排便の可能性を減らすために、餌は与えず、 4 ~ 6 時間活動を制限した。

メトロニダゾール群では、15 mg/kg q12h POで7日間、メトロニダゾールが投与された。 嘔吐が認められた場合のみ、マロピタント 1 mg/kg sc q24hを行った。

結果

糞便スコアの変化
治療前の糞便スコアは糞便細菌叢移植群とメトロニダゾール群に差はなかった。糞便スコアは、両群で 0 日目と比較して 7 日目と 28 日目に有意に減少した 。 28 日目の糞便スコアは、糞便細菌叢移植群の方がメトロニダゾール群よりも有意に低かった。

糞便細菌叢移植群の犬は、微生物の多様性の増加、健康な対照犬に近い微生物叢の分布、さらに腸内細菌叢の異常指数の大幅な減少によって示されるように、微生物叢の正常化を示した。 メトロニダゾール群の細菌叢は、28日目でも持続的な腸内細菌叢異常を示した。

みや動物病院