Clinical Effects of Faecal Microbiota Transplantation as Adjunctive Therapy in Dogs with Chronic Enteropathies— A Retrospective Case Series of 41 Dogs

補助療法としての糞便細菌叢移植が慢性腸症の犬に及ぼす臨床効果について- 41頭の犬における回顧的検討

Linda Toresson et al.Veterinary Sciences. 2023.

introduction:慢性腸症の犬の多くは標準治療に反応するが、約 15 ~ 43% が治療に反応しない非反応性腸症と言われている。健康な犬と慢性腸症の犬の腸内細菌叢を比較した最近のメタ分析では、慢性腸症の犬の大部分が腸内細菌叢に異常があると結論付けられてる。 腸内細菌叢の異常指数を正常化するために糞便細菌叢移植は直接的に作用すると考えられる。 再発性クロストリディオイデス・ディフィシル感染症に対しても糞便細菌叢移植は抗生物質による治療より効果的で、さらに、ヒトの潰瘍性大腸炎に二重盲検スタイルの研究でも移植を受けた患者の41人中11人が寛解に至ったのに対し、プラセボ群は40人中3人であった。同様に経口の移植研究でも、移植群では8/15で寛解したのに対し、プラセボ群は3/20であった。

犬においても多くの研究で有効性が証明されているが、用量、移植回数、移植間隔が異なり、標準化されたプロトコールがない。そこで、本研究ではCIBDAI に基づいて、慢性腸症の犬の補助療法としての糞便細菌叢移植の臨床効果を評価し、移植に反応する犬と反応しない犬の経時的な腸内毒素症指数を比較することを目的とした 。

Animals:8 週間以上続く非反応性腸症で移植後3ヶ月間の追跡調査が可能であった症例を用いた。 超音波検査、基礎コルチゾール、血液生化学、寄生虫検査、病理組織学的検査を行なっている症例を用いた。除外基準は、移植後の新たな免疫抑制剤、食事の変更、腸内寄生虫の検出、不完全な医療記録とした。
ドナーは抗生物質、非ステロイド性抗炎症薬、免疫抑制剤による治療は一度も受けてない健康なBCS4~5/9の犬3頭を用いた。4歳の去勢済みのゴールデンレトリバー、4歳の雄の雑種犬と、1歳の雌のラブラドールレトリバーであった。

methods:移植便は毎日〜隔日でビニール袋に採取され、日付と重量を記載し、移植処理の48時間前まで-20 °C で最大 3 か月間冷凍保存された。移植前6時間の絶食と自由飲水とし、移植直前に排便のために 30 ~ 60 分間散歩し、移植15分前にアセプロマジン (0.1 mg/kg) を皮下投与した。5 ~ 7 g /1 kg の冷凍便を、移植4 ~ 24 時間前に冷蔵庫で解凍し、室温で 0.5 ~ 1 時間放置した。20 ~ 120 mL の滅菌生理食塩水と混合し、注射器と直腸カテーテルを通過できる粘稠度になるように調整した。移植液をろ過し、 60 mL の滅菌シリンジで吸引し、16 Frのカテーテルを使用して直腸投与した。 移植後4~6時間は餌を控えるよう指示した。推奨治療計画は、10 ~ 20 日の間隔で 3 回とした。移植液は冷蔵庫で最大 72 時間保管した。

results:年齢は0.6~13(平均5.8)歳の41頭の犬が組入れられた。性別は、15/28雄、13/28去勢雄、8/13避妊雌、5/13雌であった。症状は、32/41下痢、18/41無気力、13/41ステロイドを維持量まで減量できない、13/41腹痛、最初の移植までの治療期間は1~110ヶ月であった。34/41で腸生検を実施し、22/34はリンパ球形質細胞性腸炎であった。24/41は免疫抑制部分反応性腸症で、7/41はストロイドの副作用が重度であり、タンパク漏出性腸症も含まれていた。

移植手技は容易で、症例にも受け入れられた。1頭のみ30分以内に排泄したが、それ以外は1~15時間維持できた。30/41で3回、6/41で2回、2/41で5回、1/41で5回以上、無反応の2例はそれぞれ1回と4回の移植を受けていた。31/41  (76%) は臨床症状が改善し、26 /31は良好な反応を示し、5 /31は短期間の反応で、10 /41は無反応であった。治療前の CIBDAI は 2 ~ 17 であったが、移植後は 1 ~ 9 に有意に減少した。10/41が移植後に副作用認めた。 7 /10に一過性の下痢 を認め、無治療で2 ~ 3 日以内に正常化した。

みや動物病院