Unlicensed Molnupiravir is an Effective Rescue Treatment Following Failure of Unlicensed GS-441524-like Therapy for Cats with Suspected Feline Infectious Peritonitis.

Meagan Roy et al, Pathogens. 2022 Oct 20;11(10):1209.
GS-441524抵抗性の猫伝染性腹膜炎に対するモルヌピラビルの有効性

猫伝染性腹膜炎 (FIP) は、腸管コロナウイルスの変異によって引き起こされる致命的な病気であったが、抗ウイルス薬の進歩により、FIP は治癒可能となった。プロテアーゼ阻害剤であるGC376 は、FIPの猫 20 匹中 19 匹の FIP の臨床症状を改善したが、長期的なコントロールは難しかった。 ペダーセンらは、レムデシビル (GS-5734) のヌクレオシド類似体および活性代謝物である抗ウイルス化合物 GS-441524を投与し、31 頭中 25 頭の猫が寛解することができた。しかし、全ての治療選択肢を使い果たした症例もいることから、FIP に対する効果的な治療オプションが必要とされている。

新型コロナウィルスの発生により、新しい抗ウイルス薬が開発され、メルク社のモルヌピラビル(EIDD-2801)は、コロナウイルスにおけるグアニンからアデニンへ、およびシトシンからウラシルへのヌクレオチド遷移変異を増加させるヌクレオシド類似体の経口プロドラッグで、突然変異率を増加させ、ウイルスを不活化する。
FIPの猫の飼い主はモルヌピラビルにはコロナウイルスを不活化する可能性があるため、無認可で使用してきた。モルヌピラビルはFIPの 第一選択療法として、また、GS-441524 や GC376 療法に抵抗性のFIPに対する救急療法として使用されているにも関わらず、論文としては掲載されていない。

材料と方法:オハイオ州立大学で実施され、FIP の診断、臨床徴候、初期治療、モルヌピラビル療法、有害事象、治療期間、および 寛解時間に関する調査で、獣医師からFIPと診断され、初期治療に反応しなかった、あるいはモルヌピラビル以外の治療後に再発した症例を対象とした。 8~10週間のモルヌピラビル経口投与療法が完了した症例で、データが不完全であったり、獣医師によってFIPと診断されなかった症例は除外した。

モルヌピラビル投与前の初期治療
26/30頭が、未承認の GS-441524 またはGS-441524 の組み合わせによる、初期治療を受けた。 13/26頭はGS-441524の注射剤を投与された。GS-441524の開始用量は 2 mg/kg から 10 mg/kg の範囲で、一般的には、5~6 mg/kg (n=8 ) と 10 mg/kg (n=7 ) が1 日 1 回投与であった。1日2回投与されたのは4頭のみであった。
GS-441524の一次治療を受け26 頭の全頭が再発したか、十分な反応を示さず、最終的に10/26頭がGS-441524の2回目の治療を受け、16/26頭がモルヌピラビルを開始した。

モルヌピラビルによるレスキュー療法
モルヌピラビルを投与された26頭の平均開始用量は 12.8 mg/kg を 1 日 2 回であった。 1頭で1日1回、2頭で1日3回投与され、一般的な開始用量は、12 mg/kg を 1 日 2 回でした。 投与量は 6 ~ 28 mg/kg の範囲で、1 日 2 回であった。最終投与量の平均は 14.7 mg/kg を 1 日 2 回で、用量範囲は 7 ~ 30 mg/kg を 1 日 2 回であった。
治療期間の中央値は 12 週間、範囲は7 ~ 20 週間で、7週間以上の治療期間を完了した26頭すべてが生存した。モルヌピラビル治療開始後 3 週間以内に 92% 以上の猫で臨床症状が改善したと報告し、84.6% の猫は 2 週間以内に、ほぼ半数 (46.2%) は 1 週間以内に改善を示した。モルヌピラビルの副反応では、吐き気、嘔吐、食欲不振、耳先の折れ曲がり、もろいひげ、白血球減少症、が3 頭に認められた。24/26 頭が FIP の臨床的寛解状態にあり、1頭はモルヌピラビル治療終了後、長期にわたる発作により死亡し、治療終了後、4週間で再発した1頭は、2 回目のモルヌピラビル治療に反応せず、安楽死となった。

モルヌピラビルによる初期治療
平均開始用量11.75 mg/kgを1日2回(範囲8~19 mg/kg)、平均終了用量12.25 mg/kgを1日2回(範囲8~19 mg)の経口モルヌピラビルで治療し、治療期間の中央値は11.5週間で、2頭は10週間、2頭は13週間治療された。すべての飼い主は 2 週間以内に臨床的な改善が見られたと報告し、全例で副作用なく生存している。

FIP 病型に基づく分類
神経型は16/30、眼球型2/30、滲出型7/30、および非滲出型5/30であった。神経型の平均用量は14.4 mg/kgを1日2回、最終投与量の平均は 16.4 mg/kg を 1 日 2 回で、治療期間の中央値は12週間であった。眼球型の平均用量は11 mg/kg 1日2回、最終用量は13.5 mg/kg 1日2回で、 平均16.5週間投薬した。滲出型は、平均用量10.5 mg/kgを1日2回、最終用量は11.1 mg/kgを1日2回で、治療期間の中央値は13 週間、非滲出型は、開始用量 10.6 mg/kg を 1 日 2 回、最終用量 12.8 mg/kg を 1 日 2 回で、治療期間の中央値は10週間であった。

コストとオーナーの満足度
GS-441524 ベースの治療の平均コストは 3,448.83 ドルで、モルヌピラビルの平均コストは 1045ドルでした。 飼い主の90%は、モルヌピラビル治療に「非常に」または「ある程度」満足していると報告した。

結論 本研究によると、FIPの第一選択療法としてモルヌピラビルを使用する場合、12mg/kgを1日2回、約12週間投与することが効果的であると考えられる。 GS-441524治療無効例や、再発に対する救済療法としてモルヌピラビルを使用する場合、12 ~ 13 週間 12 ~ 15 mg/kg の用量を 1 日 2 回投与することが有効であると考えられる。 FIP の病型で分類すると、神経型は15 mg/kg 、1 日 2 回、12 週間投与することは、効果的であると考えら、 眼型、滲出性型、および非滲出型には、12 mg/kg のモルヌピラビルを 1 日 2 回、12 ~ 13 週間投与するのが効果的であると考えられる。HERO Plus 2801という商品の無認可のモルヌピラビルの治療プロトコルは、滲出性および非滲出性FIPの場合は1日1回25 mg/kg、眼型には1日1回37.5 mg/kg、神経型には50 mg/kgを投与するとされており、286 頭の猫を対象とした添付文書によると、28 頭が 4 週間の治療で治癒し、258 頭が 8 週間の治療後に治癒し、死亡例ないとされているが、論文としては掲載されていない。報告されたモルヌピラビルの副作用は、折れ耳、ひげの喪失、重度の白血球減少症であったが、用量が23 mg/kg 1日3回と30 mg/kg 1日2回と高用量であった。

こちらもFIPに対するモルヌプラビルの有効性を検討した論文です。有効で副作用も少なく魅力的な治療法と結論付けています。モルヌプラビルは常備していますので、FIPでお困りの方は、是非、ご相談ください。

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