猫伝染性腹膜炎FIPに関する欧州のガイドライン
Feline Infectious Peritonitis: European Advisory Board on Cat Diseases Guidelines
9.FIP の一般的な予後
効果的な抗ウイルス治療が利用可能になる前には、FIP の猫は通常、発症から数週間以内に死亡するか安楽死させられていた。その中で、非ステロイド性抗炎症薬、免疫刺激薬、インターフェロン、グルココルチコイドなどで、数か月または数年間生存することがあったが、効果的な治療とは証明されていなかった。
グルココルチコイドを投与された浸出液を伴うFIPの猫43匹を対象とした前向き研究では、確定診断後の生存期間中央値はわずか8日で、別の研究では、滲出型の生存期間の中央値が21日、非滲出型は38日と報告されている。 予後不良因子は高ビリルビン濃度、不良全身状態、低血小板数、低リンパ球数、低ヘマトクリット、低ナトリウム濃度、低カリウム濃度、高AST活性、および多量の胸水、プレドニゾロンの使用であった。
10.FIPの治療
近頃、FIP に対する効果的なヌクレオシド類似体の抗ウイルス薬が利用可能になり、FIPの治療は完全に変わり、多くの場合治癒可能となった。 新しい抗ウイルス治療は即効性があり、数日以内に臨床的改善が見られるため、診断を完全に確定することなく、FIPの可能性が高い猫に対して試験的に治療を行うことも可能である。抗ウイルス治療に対する迅速かつ持続的な改善はFIP の診断を裏付けるためである。
10.1. FIP の抗ウイルス治療
レムデシビルの有効成分であるアデノシンヌクレオシド類似体であるGS-441524は、FIP治療に革命をもたらした。レムデシビルはウイルス RNA 合成過程において、RNA ポリメラーゼを阻害してRNA 転写中に RNA 鎖を停止させる。 GS-441524 の認可された製剤は英国およびオーストラリアで入手可能である。
GS-441524は経口投与または皮下注射で投与される。皮下注射は痛みを伴う。生存率は主に浸出型で 81%や82% 、非浸出型では 94% などと報告されている。
モルヌピラビル (EIDD 2801)は経口薬で、FIPの治療に有望な結果が得られ、推奨用量は、12 ~ 15 mg/kg を 12 時間ごとに 84 日間とされている。モルヌピラビルを12~13週間、12~15 mg/kg POで12時間毎に投与し、成功したと報告されている。猫に使用できるモルヌピラビルの認可製品はないが、人間に認可された製品は存在しており、GS-441524 よりもはるかに安価であり、認可された製品が猫に使用できるようにする必要がある。
猫伝染性腹膜炎のヨーロッパのガイドラインで、検査方法や治療方法など詳しく記載されています。非常に長い論文ですので、予後とモルヌプラビルに関する部分のみ抜粋しています。やはり、安価で有効な治療方法であると結論づけています。