肝性脳症の病態:肝性脳症の原因物質は、食事中のタンパク質が消化吸収される過程でアンモニアをはじめとする有毒物質が産生され、これらの肝臓での処理能力の低下やシャント血管により全身循環に回ることにより血中濃度が増加し、アミノ酸インバランスも加わり、血漿成分の異常をきたす。これらの異常物質が脳細胞を直接障害するか、脳内伝達物質を介して意識障害を起こす。原因物質としては、アンモニア、メルカプタン、アミノ酸インバランス、GABAベンゾジアゼピンレセプター複合体異常などがある。

肝性脳症のグレードⅠ:軽度の運動失調、軽度の無関心、グレードⅡ:間欠的食欲不振、間欠的な嘔吐、流涎、重度の無関心、中程度の運動失調、グレードⅢ:食欲不振、ヘッドプレス、一時的失明、無目的歩行、重度の無関心と運動失調、グレードⅣ:痙攣発作、昏迷、昏睡

吸収されたAAAアミノ酸は、ほとんどすべて肝臓で代謝されるが、BCAAは肝臓では代謝されずに筋肉でアンモニアを消費してグルタミンを生成する。肝機能が低下するとアンモニアもAAAも代謝されずに血中濃度が上昇する。筋肉ではアンモニアを消費してBCAAが代謝され減少する。BCAAが減り、AAAが増加するので、BCAA/AAAは減少する。

急性肝性脳症の治療目的 ①アンモニアを低下させる。 ②アミノ酸インバランスを改善させる。 ③ベンゾジアゼピン拮抗薬を投与する。 ④脳圧降下処置

慢性肝性脳症の治療目的 ①アンモニアを低下させる。 ②アミノ酸インバランスを改善させる。

治療方法 浣腸:腸内細菌を減少させ、アンモニアを低下させる。ラクツロース:水=3:7で浣腸液を作成し、ラクツロースとして1~2ml/kgを注腸し、排便させる。脳圧降下処置は、マンニトールやグリセオールを使用して脳圧を低下させる。マンニトール 0.5~1.0g/kg 10~20分かけて点滴 グリセオール 5~10ml/kg 2~3時間かけて点滴

慢性肝性脳症の治療

食事療法 肝性脳症がなければ極端な蛋白制限は必要ない。

ラクツロース 腸内のアンモニア産生の抑制のために、1ml/kg 1日2〜3回を基準として開始して、軟便になる用量で使用する。

経口BCAA製剤 用量は決まっていないので、BTRを測定しながら決定する。

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