Assessment of the FreeStyle Libre 2 interstitial glucose monitor in hypo- and euglycemic cats.

「低血糖および正常血糖の猫における フリースタイルリブレ 2 を用いた細胞間質糖モニターの評価」

Alisa S Berg et al. J Vet Intern Med. 2023

INTRODUCTION:継続的な細胞間質糖モニターは、インスリン治療のモニタリングに革命をもたらし、健康な猫と糖尿病の猫で、正常〜高血糖範囲 の血糖とよく相関している。フリースタイルリブレ2 は、 人では低血糖でも正確であるが、ヒトのデータから外挿することは危険であり、猫では血糖のあらゆるレベルで評価する必要がある。

MATERIALS AND METHODS:フロリダ大学施設内動物管理使用委員会によって承認された9 匹のショートヘア猫 (オス 5 匹、メス 4 匹) で、年齢の中央値 は 6歳で、体重の中央値は 4.9 kgであった。 研究開始前の少なくとも 3 か月間、すべての猫を社交化し、取り扱いに慣れさせ、毎日 1 ~ 3 時間の人間との接触や、多くのおもちゃやタワーなど、充実した飼育環境が提供された。 十分な量のキャットフードを与え、環境温度は20℃から24℃で行われた。

少なくとも 3 か月前に、全身麻酔下で頚静脈に血管アクセスポートを設置し、毎週のヘパリン添加生理食塩水洗浄とヘパリンロックによって維持した。実験の前日に、22~24Gのカテーテルを橈側皮静脈に留置した。

血糖濃度は、猫で検証済みの手持ち型血糖計によって測定され、フリースタイルリブレ 2センサーは少なくとも 1 時間前に設置し、細胞間質糖濃度と血糖値を同時に記録した。

高インスリン・低血糖プロトコルを用いて低血糖を作成した。開始10分前および0分に測定開始し、シリンジポンプを使用して0.1 U/kg/hでレギュラーインスリンを持続点滴した。血糖値がベースラインから少なくとも10%減少した後、50%糖液を滅菌0.9%生理食塩水で20%に希釈した糖液の注入を開始し、その速度を調整して血糖値を30分間かけて60 mg/dLまで減少させた。糖液の速度を調整して、60分間血糖値を54~66mg/dLに維持した。その後、糖液の注入速度を下げて、血糖値を 30 分間かけて45 mg/dL まで低下させ、60分間、41~49mg/dLに維持した。 インスリン注入を中止し、糖液の注入速度を遅くし、正常血糖に復した。

RESULTS:9 頭の猫から364 のペアのデータが得られ、血糖と細胞間質糖のペアは中程度の正の相関を示した。このうち217 /364のデータ安定血糖期間 (10 分間の血糖値の変化が 1 mg/dL/min 以下) の間にあり、正の強い相関があり、どちらも血糖の 15 mg/dL (血糖100 mg/dL以下) または 15% (血糖100 mg/dL以上) 以内であった。血糖が80~120mg/dLの範囲(n=64)では平均12.9±12.2、血糖が60~79mg/dLの範囲では平均8.8±11.2(n=29)で細胞間質糖が血糖より過小評価し、血糖50~59 mg/dL の範囲 (n = 71) では平均 3.2 ± 7.4、血糖29~49 mg/dL の範囲 (n = 71) では 7.8 ± 5.2 で血糖値を過大評価した。
有害事象に神経症状はなく、低血糖中に8回の嘔吐が発生した。

DISCUSSION:細胞間質糖は血糖を過小評価する傾向が報告されたいたが、低血糖では逆に過大評価する傾向が認められた。ガイドラインでは分析精度を、95% が血糖値の 15mg/dL (血糖100 mg/dL以下) または 15% (血糖100 mg/dL 以上) 以内に収まるものと定義している。 本研究でも、低血糖においてもこのレベルの精度を実証した。

本研究の誘発された低血糖は、今までで最大量のデータを安全かつ人道的に収集することに成功した。血糖と細胞間質糖の違いは、血糖が安定し、間質と血液の間で平衡に達するまでに必要な時間によって引き起こされる。 本研究では安定した血糖を維持し、細胞間質糖との偏りをより正確に評価可能とした。以前の研究で6頭の猫への0.5 g/kgのブドウ糖静脈投与では、投与後の5 ~ 10 分の遅延、最大値までは 30 ~ 45 分も遅延した。高齢の動物や脱水状態の動物など、間質組織の灌流が低下している猫では遅延時間が長くなる。有害事象として中枢神経症状はなく、嘔吐は低血糖と相関関係があったため、嘔吐は低血糖のより感度の高い臨床マーカーとして応用できる可能性がある。我々なフリースタイルリブレ 2は正常血糖および高血糖の範囲で 血糖を過小評価する傾向があるものの、60 mg/dL 未満の低血糖の範囲では血糖を過大評価する可能性があることに注意する必要がる。

当院でも、フリースタイルリブレは糖尿の猫ちゃんでよく使用します。入院して血糖曲線を作成していた頃のことを考えると、在宅でストレスフリーな血糖管理が可能となる革新的な技術なので、猫ちゃんは楽になったと思います。一方で正常〜高血糖では過小評価、低血糖では過大評価する傾向があり、血糖の変動後に細胞間質糖が安定するまでの時間差、動物の脱水状態など、血糖の反映される時間差の延長などに注意するとともに、低血糖では嘔吐が臨床マーカーになることも有益な情報でした。

みや動物病院