Outcomes of treatment of cats with feline infectious peritonitis using parenterally administered remdesivir, with or without transition to orally administered GS-441524.

レムデシビルによる猫伝染性腹膜炎の治療成績

Sally J. Coggins et al. J Vet Int med. 2023.

INTRODUCTION:レムデシビル (GS-5734) は GS-441524 のプロドラッグで、滲出性、非滲出性、眼症状および神経症状の猫伝染性腹膜炎に対する有効性が報告されている。この前向き研究では、レムデシビルで治療された猫伝染性腹膜炎の猫の生存状況を記録し、経口投与への移行の有無にかかわらず臨床経過を長期に渡り追跡することを目的とした。

非ランダム化前向き研究には、猫伝染性腹膜炎と確定診断された一般家庭の症例で、非倫理的であるため既に治療されている症例も組み入れた。ステロイドは 1 ~ 2 週間で徐々に中止した。治療期間は最短84日で、12か月までモニタリングは継続された。

Treatment protocols:非経口(レムデシビル)または経口(GS-441524)投与を用いて、治療は最低 84 日間、寛解達成後少なくとも 2 週間継続された。
プロトコール 1:低用量プロトコール:導入期は 0、1、2、および 3 日目に 10 mg/kg のレムデシビルをゆっくりと (10 ~ 15 分間) 静脈内投与した。 維持期は最低84日間とし、6 mg/kgを24時間ごとに皮下投与し、眼または神経症状を伴う場合は10 mg/kg とした。

プロトコール 2:高用量プロトコール :滲出型導入期10mg/kg q24h iv or sc for 4days 維持期8~10mg/kg sc q24h 84days 非滲出型導入期15mg/kg q24h iv or sc for 4day 維持期 10~12mg/kg sc q24h 84days 神経型または眼型導入期15mg/kg q24h iv or sc for 4days 維持期 12~15mg/kg sc q24h 84days
プロトコール 3 :経口投与移行型 連日注射による治療の継続が許容できない場合 、同用量の経口投与を選択可能で、空腹時に投与し、 3 ~ 5 mL の水で確実に胃内に到達するようにし、20 mg/kg 以上の場合、2分与とした。

体重増加に伴い用量を増量する一方で、体重減少の場合には投与量は減量しなかった。 食欲増進薬や制吐薬などは併用可能、 注射部位の不快感には、ガバペンチンおよびブプレノルフィン坐剤を使用した。

Results:22/28頭(78%)去勢オス、5/28頭(18%)が避妊メス、1/28頭(4%)がメスで、23/28頭(82%)は1歳未満で、中央値は7.5か月齢であった。全例、猫免疫不全ウイルスおよび猫白血病ウイルス陰性であった。

23/28頭は滲出型、5/28頭が非滲出型で、滲出型の1 頭は、眼病変があり、神経症状を示す猫はいなかった。 16/23頭 (69%) は腹水貯留、5/23頭(22%) は胸水、2/23頭(9%) は胸服水が貯留していた。 食欲不振 (96%) と体重減少 (89%) が最も多い症状であり、すべての猫は、組入日のAG 比が 0.6 以下であった。

15/28頭(54%)が最後まで注射のみで治療し、11/15頭は低用量レムデシビル、4/15頭が高用量レムデシビルプロトコールを実施し、13/28頭(46%)は経口投与に移行し、移行までの期間の中央値は20日であった。

24/28頭(86%) が 6 か月間生存し、その中には診断時に意識が低下した 3 頭が含まれていた。 2頭は48時間以内に死亡し1 頭は尿道閉塞を発症し、安楽死となった。
開始後48 時間生存した25/28頭のうち、24/25頭は6 か月生存し、生存率は 96% であった。15/25頭(60%) は寛解を維持し84 日目までに治療を完了した。10/25  (40%) で治療が延長され、5/10頭は投与量を増加した。 3/10頭は 6 か月の時点でも治療を継続していた。 3/25(12%) は、治療中止後 2 ~ 13 日でFIP 兆候 (発熱、嗜眠、食欲不振) が再発し、追加治療として5mg/kg用量を増加し、すべての猫が6か月を過ぎた時点で寛解に達した。

再発率と用量:低用量肥厚、軽度のかゆみ群の6か月までの再発率は30%(3/10)であったのに対し、高用量レムデシビル群の2 例および経口移行群(n = 13)では再発しなかった。 低用量レムデシビル群で、8/10頭に6 mg/kg未満(5.26~5.99 mg/kg)への一時的な用量減量が発生した。

生存した25頭は急速に臨床症状が改善し、発熱は中央値 7 日で回復し、23/28頭の滲出型は中央値 9.5 日で滲出液は消失した。

2/25頭(8%)に皮下投与後の痛みによる攻撃性が発生し、注射部位の軽度の不快感が 13/25頭 (52%) で、注射部位の軽度の肥厚やかゆみが 5/25 (20%) で観察された。経口投与では副作用は観察されなかった。

こちらも猫の伝染性腹膜炎の抗ウィルス薬による治療に関する論文で、高い寛解率を報告しています。

みや動物病院