消化管型リンパ腫のレスキュー治療に ACNU を使用した 犬の1 例
犬のリンパ腫の治療には、シクロフォスファミド、ドキソルビシン、オンコビン、プレドニゾロンを組み合わせたCHOP療法が高い寛解率を示しているため、第一選択で用いられる。しかし、プロトコール終了後に再燃した場合には、同様のプロトコールで再導入を図るが、最終的には腫瘍が薬剤抵抗性を獲得し、抗がん剤が効かなくなる。その際にはレスキュー療法として、薬剤耐性を獲得しにくいアリキル化剤や、未使用の抗がん剤を単剤、または組み合わせて使用する。この論文では、腸管型リンパ腫の犬のレスキュー療法に、ニトロソウレア系の抗がん剤であるACNUを用いて治療し、良好な成績を収めている。同系統のCCNUが一般的に用いられるが、日本では未発売で個人輸入する必要があること、価格が高くなり、経済的なメリットがなくなったこと、剤形が10mg、40mg、100mgしかなく、分割できないため日本の犬の体重は軽いので、調整が難しいことなどの理由から、水溶性の注射薬であるACNUはメリットが大きいと考えられる。
症例は、ミニチュアダックスフンド 去勢雄 12歳齢 体重12.1kg 十二指腸にピンポン玉大の腫瘤があり、non-B/non-T 低〜中分化型消化管型リンパ腫と診断した。
治療は、CHOP多剤併用化学療法を実施したところ112病日に寛解し、231病日に再燃した。238病日からACNU 25mg/m2 iv q3wksで投与し、301病日に完全寛解した。投与を継続し、434病日に再燃が確認されたため、27mg/m2に増量し、現在も継続治療している。