上腕骨骨折の癒合不全に創外固定を行なった猫の1例
動物の骨折の治療は、基本的には手術で固定しないと癒合しません。手術で骨に直接プレートを当てて、スクリューで固定する内固定法と、皮膚の外から骨に長いネジつきピンを刺入し、体の外で固定する創外固定法があります。どちらが優れているというのではなく、状況に合わせて治療方法を選択する様にしています。
今回の猫ちゃんはいわゆる「地域猫」さんで、右前足を数ヶ月前に骨折してしまいました。お世話をしていた方が、かかりつけの病院で手術をしていただいたのですが、内固定が破綻してしまい癒合不全になっていました。このままだと断脚の可能性も出てくる状態でした。地域猫さんでご予算も限られるので、当院でお引き受けすることにいたしました。
緩んだスクリューが骨を削り、また、前足を挙げているので体重がかからないので骨が非常に脆くなっており、再手術は困難を極めました。最終的に脆くなった前の固定部位の骨は使わず、骨折部位から遠い位置で創外固定法で強固に安定させることができました。
数週間後に、骨折部位より先のピンを1本除去し、固定強度を下げました。骨が癒合し強度も増しています。
最終的に3ヶ月かかりましたが、無事に骨癒合し、全ての固定具を除去して完治しました。断脚せずにすみ、4本足で走り回っている姿を見ると、こちらまで嬉しくなってきます。お大事になさってください。