脾臓はお腹の中にある血液の貯蔵庫のような臓器ですが、時に怖い癌を作ることがあります。一番多いのが血管肉腫で、平均年齢9~11歳の高齢なワンちゃんに起こることが多いとされています。急速に大きくなり、あちこちに転移することがあります。腫瘍細胞が増殖した臓器から出血して、初めて気が付くこともありますので、日ごろの検査が大事です。

血管肉腫の症状は、初期には、ほとんどの場合で無症状です。ひとたび進行すると、腫瘍からの出血により、貧血しぐったりして来院なさいます。その後、播種性血管内凝固と呼ばれる致死的な病態に陥ります。

血管肉腫の治療は、根治的な治療にはならないものの、出血を止めるという目的の外科手術です。しかしながら、外科手術単独では転移後の増殖を防ぐ事はできず、その生存期間中央値は2.7ヶ月と考えられています。手術後に抗がん剤治療を行うと、少し腫瘍の増殖を抑えて長く生きることができます。
その成績をまとめると、血管肉腫のステージ分類と平均生存期間は以下のようになります。            
ステージⅠは腫瘍は脾臓だけにあり転移像がない状態で、平均生存期間は12ヶ月です。
ステージⅡは脾臓の破裂(腹腔内出血)がある場合で、平均生存期間は6ヶ月です。
ステージⅢは転移があるワンちゃんでは、詳細なデータはありませんが、生存期間が短いのは想像に難くありません。

大事なのは、破裂する前に発見して切除することです。しかし、破裂しないと無症状なのでほとんど気が付きません。8歳以上の大型犬は1年に1回は腹部超音波検査を受けましょう。空腹で来院していただければいつでも可能です。

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